1 ものづくりに不可能はない?
「ものづくりに不可能はない」とは、私の好きなフレーズの一つで、困難に突き当たった時、気持ちを奮い立たせる常套句として用いてきました。しかし、職場の専門学科(工業)の同僚に言わせれば、私の意に反し「不可能だらけ」だそうです。
トーマス・エジソンが「ほとんどすべての人間は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。いよいよこれからだというのに」と断言したように、科学の可能一性の観点からすれば、「不可能はない」が、「ものづくり日本」に条件を限定すれば、「不可能だらけ」になるのかもしれません。
2 危機に瀕するものづくり日本
世界の経済やものづくりの激変ぶりは、本年3月に韓国・サムスン電子の会長職に復帰した、李会長の復帰後の第一声にも見られます。それは、「今後10年以内にサムスンを代表する製品は大部分が無くなる」でした。メモリ、液晶パネル等、世界トップシェアを占める製品の製造からの撤退も余儀なくさせられるほどの激しい企業間競争の現実を垣間見る思いがします。
日本のものづくりも、これまでの日本の生産システムの根底が覆る変化にさらされています。先ず、一企業(企業グループ)による部品生産から組み立てまで一貫した工程方法が崩れ、世界最適調達に見るような従来の系列・協力を超えた部品の多国籍調達が普通になってきたことです。メイドインジャパンは最早、完全に昔話になってしまったと言えそうです。
ものづくりの仕組みが世界各地に分散化することにより、資本だけではなくものづくりの仕組み自体の海外移転がすすんで、結果として日本のものづくり総体が空洞化しました。
その他、生産拠点のアジア移転ともあいまって、日本のものづくりの裾野を広く支えてきた基本技術・技能も移転し、それが日本のものづくりを圧追するようになっています。
さらにものづくりに深刻な影響を及ぼす因子である人口減少による、労働人口の現象も見過ごせません。とくに、第1次産業や製造業での就業人口の減少が懸念されます。ざっと見ただけでも、わが国のものづくりの置かれている深刻な状況がわかります。
3 ものづくり日本の再生に向けて ― 工業系高校ができること ―
私の勤務校がある川崎市は昔からものづくりが盛んですが、大資本の世界企業と高度な技術力を有する中小零細企業とが折り重なって重層構造的に産業基盤を構成し、ものづくりのいわば「寄木細工的進化」が見られます。
こうしたものづくりの進化と同時に新素材やそれの加工技術を応用した新たな技術構築が進行し、地域的レベルでの国際競争カを獲得しています。こうした川崎市の進化したものづくりに、日本の産業再生の光明を見る思いがします。
ものづくりの現実を直視し、新たなものづくりのモデルに触発された教育内容の革新と人材育成プログラムの開発・実践、これが工業系高校に課せられた重要な今日的使命であると思います。
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